帯状疱疹ワクチンによるアルツハイマー病や認知症の予防効果が可能性が示され非常に注目されています。
イギリスのウェールズ(UK)で最初に行われた「生ワクチン(ゾスタバックス)」に関する研究は、その「偶然が生んだ公平な比較(自然実験)」という研究手法の質の高さから、世界的に大きな衝撃を与えました。
この研究の主なポイントを整理します。
1. 研究の背景:偶然の「自然実験」
2013年9月、ウェールズでは帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まりましたが、その対象者は「1933年9月2日以降に生まれた人」と厳密に決められました。
A群: 1933年9月1日生まれ(一生、公費接種の対象外)
B群: 1933年9月2日生まれ(公費接種の対象)
わずか1日(数日)の誕生日の違いだけで、他の健康状態や生活習慣に差がない「ほぼ同一の2つのグループ」が自然に作られたことになります。これにより、従来の観察研究で課題だった「健康意識の高い人だけがワクチンを打つ」というバイアスを排除した、信頼性の高い比較が可能になりました。
2. 判明した驚きの効果
約30万人を対象に、最長7年間の追跡調査を行った結果、以下のことが明らかになりました。
認知症リスクの低下: ワクチンを接種したグループは、非接種グループに比べて、新しく認知症と診断される確率が約20%(19.9%)低下していました。
女性でより顕著な効果: 男女別でみると、特に女性において強力な予防効果(約25〜30%の低下)が認められました。
他の疾患には効果なし: 興味深いことに、このワクチンは認知症リスクは下げましたが、他の一般的な病気の罹患率や死亡率には影響を与えませんでした。つまり、ワクチンが「脳の健康」に特異的に作用している可能性が示唆されました。
3. 医学界への影響
このウェールズの研究(2023年発表)がきっかけとなり、「帯状疱疹ウイルスが脳内の炎症を引き起こし、アルツハイマー病の一因になっているのではないか」という仮説が現実味を帯びるようになりました。
その後、2024年にはオックスフォード大学が、さらに効果が高いとされる「不活化ワクチン(シングリックス)」でも同様(あるいはそれ以上)の予防効果があることを『Nature Medicine』誌で発表し、現在の「ワクチンによる認知症予防」への期待につながっています。
ワクチンの福音について次のコラムで紹介します。


